遺産分割協議前における預貯金の払戻し制度とは?


民法の改正により、2019年7月から遺産分割協議前における預貯金の払い戻し制度が開始されました。
開始されてから、約3年しか経過していないためご存知の方も少ないかと思います。

改正前と比較しつつ事例を基にして解説いたします。

改正前

事例でいいますと、被相続人が父であるA、相続人は子のBとCとします。

父Aと同居していたBが父の葬儀費や入院費の精算のため、Aの口座の相続手続をしようと考えました。
しかし、相続人全員の協力がないと預金の相続手続きができません。
BとCの仲が円満であれば問題なく手続きができますが、不仲であったり行方不明で連絡がとれないとなると預金の解約すらできないのです。

上記は平成28年12月28日の最高裁判例でも明らかとされました。

 判例要旨
 共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも相続開始と同時に当然に相続分に
 応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。


すなわち、法定相続分としても預金の請求をすることはできず遺産分割協議(相続人全員で話し合い)で決着しなさいという意味になります。
そうなると、被相続人の入院費等かかった費用も精算できず、夫婦間の相続であれば当面の生活費すら確保できないという事態になります。

そこで、このような不都合を解消するために相続法が改正されて遺産分割協議前の預貯金の払い戻し制度が施行されました。

改正後

相続法の改正により、預貯金の一定割合については遺産分割協議成立前でも各相続人が単独で預金の払い戻しを受けれるようになりました。

ただし、預貯金額のうち相続開始時の金額の3分の1に共同相続人の法定相続分を乗じた額について単独で行使することができます。

また、払戻しができる金融機関ごとの上限金額が150万円と定められております。

上記、相続の事例を基に具体例で説明いたします。
例えばAの相続財産が甲銀行に普通預金300万円、定期預金700万円(満期到来済み)、乙銀行に普通預金240万円だったとします。
相続人である子B(法定相続分2分の1)はいくら払い戻せるかを計算します。

甲銀行
1.普通預金(300万円)×3分の1×法定相続分(2分の1)=50万円
2.定期預金(700万円)×3分の1×法定相続分(2分の1)=120万円
ただし、一金融機関当たりの上限が150万円。

乙銀行
1.普通預金(240万円)×3分の1×法定相続分(2分の1)=40万円

したがって、Bは甲銀行からは普通預金50万円、定期預金120万円を上限として、一金融機関当たりの上限額に当たる150万円まで払戻しの請求ができます。

乙銀行に対しては40万円が払戻できることになります。

遺産分割協議前預貯金払戻し制度の注意点

遺産分割協議をする必要もなく一定の金額を迅速に引き落としできることはとても有用な制度ではありますが、2点注意点がございます。

1.預貯金の払い戻し制度を受けた場合は、遺産を一部受け取ったとみなされるため相続放棄ができなくなります。
あらかじめ、被相続人の相続財産をよく調査して相続放棄の必要性がないことを確認してから制度を利用する必要があります。

2.あくまで遺産の一部分割により、自身の相続分を先に取得したという扱いになります。
もし、本制度を利用し先に預金を受けたとしても特別受益等によりその者の具体的相続分を超過する場合は、遺産分割においてその超過部分を清算することになります。

つまり、200万円預金を先に受けても、そもそも被相続人から生前贈与等の特別受益を受けており、受け取るべき相続財産が100万円しかなかった場合は、遺産分割において差額の100万円を清算しなければならないということになります。

まとめ

1.2019年7月から遺産分割協議前における預貯金の払戻し制度が開始されました。
これにより、他の相続人の同意なくして預金の一部(上限有)の払戻しを受けることができるようになりました。

2.預金金額のうち相続開始時の金額の3分の1に共同相続人の法定相続分を乗じた額について単独で行使することができます。
また、一金融機関に対して払戻しができる上限金額は150万円となります。

3.預金払戻し制度の注意点として、下記2点があります。
・預金の払い戻しを受けると相続放棄ができなくなること。

・あくまで遺産の一部分割として自分の相続分を先に取得したという取扱いになります。

 

 

この記事を書いた人
司法書士 近藤 雄太

司法書士紹介ページ

 

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