相続財産調査方法について。相続放棄も検討している方へ!
相続人は相続開始時に、被相続人の一切の権利義務を承継します。
簡単に言うと被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も相続人が全て承継することになるという意味ですね。
マイナスの財産が多ければ相続放棄を検討することになると思います。
今回は相続財産の調査方法について説明いたします。
遺品整理
まずは被相続人の遺品整理を行います。保管書類や郵送物を1つ1つ確認していきます。
相続財産の手がかりとして重要なのは、不動産の権利証や固定資産税の納税通知書、預金の通帳やキャッシュカード、証券会社からの郵送物には株式や投資信託の情報が記載されているかもしれません。
マイナス財産としては、通帳の取引履歴や消費者金融・カードローン会社の通知、借用書で確認できる可能性があります。
不動産の調査方法
直近の固定資産税の納税通知書や権利証で不動産を把握することができます。
確認できた不動産は登記簿を取得し、被相続人の名義であるか調査します。
不動産の登記簿を取得するために、土地は「所在と地番」建物は「所在と家屋番号」が最低限必要になります。
権利証や固定資産税納税通知書には所在や地番などが記載されていますので、最寄りの法務局で不動産の登記簿(1通600円)を取得します。
蛇足ですが、最寄りの法務局で全国どこの不動産登記簿も取得することができますので、北海道の不動産でも相模原の法務局で取得可能です。
課税されている不動産は固定資産税納税通知書で確認することができるのですが、問題は非課税の不動産です。
公衆用道路、墓地などは非課税のため固定資産税の納税通知書に記載されませんので、権利証か名寄帳で確認するか、公衆用道路は公図を取得し本地の隣地登記簿を取得し調査するしかありません。
※名寄帳とは特定の人が持っている不動産を一覧で確認できる書類です。市役所で取得可能です。
ただし、市町村によっては非課税の不動産は記載されないことがありますので注意です。
預貯金の調査方法
通帳やキャッシュカード、金融機関からの郵送物を探します。該当する金融機関がみつかったら、死亡日時点の残高証明書を請求しましょう。
残高証明書により、相続開始時の預金の金額が明らかになります。
通帳やキャッシュカードもみつからず、取引先の金融機関がまったく把握できない場合は、各金融機関に預貯金照会を行います。
手探りにはなってしまいますが最低限、都市銀行、ゆうちょ銀行、地元の地銀に照会をかけるのがよいのではないでしょうか。
また、最近ではネット銀行(楽天銀行、auじぶん銀行など)も増えてきました。ネット銀行は通帳がないため、発見するのに時間がかかる可能性があります。
パソコンやスマホのアプリ、メールなどを確認しネット銀行の情報を探しましょう。
株式等の有価証券の調査方法
証券会社から郵送物を確認します。証券会社からの通知により被相続人が所有する株式、投資信託、債券が確認できるかもしれません。
上場している株式に関しては、株式会社証券保管振替機構(通称 ほふり)で確認する方法があります。
ほふりに開示請求すれば、被相続人がどこの証券会社に口座をもっていたのかを調べることができます。
被相続人の使用する証券会社がわかったら、その証券会社に口座内容を確認する照会をかけます。
ほふりの開示請求手続きに関しては下記にリンクを貼りますのでご確認ください。
注意点として、あくまでもほふりが名寄をしている上場株式に限定されるため、債券や投資信託、米国株式などを預けている証券会社は開示されません。
その場合は地道に各銀行や証券会社に残高照会をすることになります。
非上場会社の株式は当然ほふりに登録されておらず、証券会社が管理することもないため探すのは困難となります。
被相続人が役員をしていた会社や遺品から会社の登記簿、定款、株主名簿が発見された場合はその会社に直接問い合わせるしかありません。
負債の調査方法
遺品整理時に借入の契約書(借用書)や請求書、督促状を保管物や郵便物で発見することがあります。
預金通帳の履歴で「ローン返済」の記載や毎月の返済がある可能性もありますので、通帳がみつかったら通帳記入をして確認しましょう。
借入があることが予想されるが、遺品整理しても資料がみつからない場合は個人信用情報機関で信用情報の開示を受ける方法もあります。
個人信用情報の開示請求
銀行、信用金庫などの金融機関、クレジットカード会社、消費者金融などの貸金業者は、正規の会社であれば全て個人信用情報機関に加盟しています。
個人信用情報の開示を受けることで、どこから借り入れをしているかを知ることができます。
個人信用情報機関は銀行系、クレジットカード会社系、消費者金融系の3つがあるので、必要に応じて次の3つに対して開示請求をおこないます。
ただし、あくまで正規の貸金業者が加盟できますので、闇金や個人間の借入は開示請求できません。
特に個人間の借入は、遺品整理で発見するよりほかなく調査は容易ではありません。
※下記表にリンクを貼っておきます。
信用情報機関 | 主な加盟企業 |
一般社団法人 全国銀行協会 (全国銀行個人信用情報センター) | 銀行・信用金庫・農協 |
株式会社 日本信用情報機構 (略称 JICC) | クレジット会社 |
株式会社 シー・アイ・シー (略称 CIC) | 消費者金融 |
まとめ
相続財産の調査方法は概ね前記のとおり行っていきます。
生活を共にしている親族の相続であれば、ある程度相続財産も把握できるかもしれませんが、まったく疎遠の相続ですと手探りでやらざるを得ません。
遺品整理で不動産、預金、株式などの金融資産、負債の手がかりをみつけましょう。
相続放棄の申立てを検討する場合は相続人になったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に申立てなければなりません。
ほふりや個人信用情報の開示請求は時間がかかるため、迅速に調査する必要があります。
この記事を書いた人
司法書士 近藤 雄太